気がつけば、あの日から神茂の印象が変わった。
あの笑顔を見てから。
「(…この人もちゃんと笑うんだ)」
不意に見せたあの笑顔は、他の人と何も変わらない笑み。
前までの神茂の印象は、どこか私達とは違う感じだった。
同じ道を歩いているとしたら、神茂だけその道からそれている感じ。
だけど
あの笑顔を見た途端、ガラリと印象が変わった。
それていた部分が一瞬にして戻った気がした。
でも、そう思うのは私だけ。
「(話してみたら結構印象が変わるのにな)」
…まあ外見からして話し掛けにくいと思うけど。
「おい、飯食べに行くぞ」
「ん、ちょっと待って。沙由、食べに行くよ」
最近、お昼ご飯は良く三人で食べている。
沙由は特に神茂の事気にしてないらしくて
三人で食べよう、そういう事になった。
そして、たまーに蒼井くんも一緒に食べてたりする。
「あ~ごめん、今から委員会」
再度「ごめん」っと言った彼女は急いで教室を出て行った。
「あ!おい!待てよ沙由!!」
その後を急いで追う蒼井くんを目に、私達は顔を見合わせた。
そういえば、蒼井くんも沙由と一緒の委員会だっけ。
「……じゃあ、二人で食べよっか」
「……………」
その言葉に返答は無く、神茂は無言で屋上へと向かった。
ただ、彼の耳が少し赤い気がする。