「………なにしてんの?」




購買の近くにある自販機。



その自販機に喧嘩を売るような目で睨みつける神茂。




「金が戻ってこねぇ…」


「お金?お釣りが出てこないの?」


「ちげーよ!入れたのに何も反応しねーんだよ!」




「くそっ!」っと自販機を揺さぶる神茂に「ちょっと」っと止めに入る。




「やめなよ、余計壊れるじゃん」


「くっそ!金返せ!」


「ああもう…
私が別の所で買ってあげるから、落ち着いて」




その瞬間、ピタリと止まった彼。




やっと落ち着いた。と安心した私は別の自販機に誘導しようとしたが




「……いらね」


「え?ちょっと、いいの?ジュース」




神茂は何も無かったかのように、その場を立ち去って行った。




「(せっかく買ってあげようとしたのに)」




呆然とする私に友達が駆け寄る。




「由羅、大丈夫だった?」


「ほんと乱暴だよね~」


「自販機独り占めすんなっつーの」




友達はどうやら私が絡まれているように見えていたらしくて




否定はしたものの、聞く耳も持ってくれなかった。




「(別にそこまで言わなくても)」




心の中ではそう思いながらも、口には出せない。




「(神茂、そこまで悪い奴じゃないんだけどな…)」




そういえば私も、いつからこう思うようになったんだろう。