廊下を歩く私の前に、ポツンと落とされていた携帯。
その携帯は無残にも画面にヒビが入ってて、落とした衝撃で割れたのであろうそれに、
あーあこれもう使えなさそう。なんて思いながらもそれを拾って、
誰のだろ、周りを見渡せば、ちょうど私の前を歩く人が1人。
それがコイツ。今私にキスをしているコイツ。神茂だった。
私と神茂はあまり喋らない。
けれど、まあ拾った物をまた元の場所に放置しておくのもあれだし…
「か、みしげ」
噛んでしまった。けど、まあいっか。
名前を呼べば、”か”の時点で振り向いた神茂に驚きつつも、
「これ神茂の?」
画面が無残にヒビの入った携帯を片手に見せれば、「あ、」っと低い声を出して私に近づく。
やっぱり神茂のだったんだ。ホッと安心する自分。
違ったらこの携帯どうしようってなってたし、元の位置に放置するところだった。