「私、借りを作るのは嫌いだから」
絆創膏を神茂の身体に押し付ける。
早く、と言いたげに見れば
「……………」
彼は黙ってそれを受け取った。
その場で貼っていく彼を横目に
「本当に…ありがとう」
目を合わせて言うのは言いづらくて
俯きながら言ったけれど
神茂が今、私を見ている事に関しては気づいていた。
「(……よし、帰ろ)」
気まずくなったその空気に、逃げるかのように立ち去る私。
だが
「………、…なに?」
ツン、と髪の毛を軽く引っ張られた事によって、動きが止められる。
振り向けば
神茂の手が私の髪の毛を軽く掴んでいて
「やっぱり好きだ。お前の事」
その髪を指で弄ぶように絡めさせ
ふっ、と
いつも眉根を寄せていた彼が
その時は緩く笑顔を見せた。