ああ……ダメだ。
クシャッと手で髪の毛を触る。
綺麗にしてきた髪の毛は、それによって乱れた。
………見てられない。
ギュッと目を閉じる。
なのに……ついつい見てしまう。
気になって、気になって……
仕方がなかった。
「……っ……」
話を終えたのか、その子に対して手を振る翔の姿。
急ぐように、私の元に駆けつけてくれる。
はぁっと息を漏らすと、一回呼吸を整えて、
「ごめん、遅くなった」
ニコッと嬉しそうな表情で笑う。
今日の一日で、初めてみるような顔だった。
また……胸が締め付けられる。
苦しくて、苦しくて……
笑うことすら忘れていて。
「ごめん…、用事思い出した…から、帰…る、ね」
よくある嘘をついた。



