「焦ったー………」




ひとまず、ホッと安心する。



自分のその伸びた手を見つめて、キュッと下唇を噛み締めた。



何してんだろ…俺。



自然に、眉根が寄る。




「クソッ………」




ムカつく。ムカつく。ムカつく。



何、俺以外の男に渡してんだよ…



スッとコイツの頬から髪の毛の方に手を移動させて、指に絡める。



黒髪のコイツの髪はサラサラで、染めた事なんてないのだろう。




「スヤスヤと寝やがって……」




俺が手を伸ばせば届くコイツとの距離。



触れることだってできる。



だけど。もしコイツが俺から離れでもしたら、



触れられるどころか、手を伸ばしても届かない。



だから、大切にしたいんだよ。



束縛なんてしない。



コイツのしたいようにさせてやりたい。