無口な彼の妬かせ方





そして、次の日。



記念日だというのに、やっぱり翔は気がついていないらしく。



今までと変わらない日常だった。



昨日以上に勉強で必死な彼に、



一応作ってきたチョコケーキを渡すか渡さないかで迷っていた時。




「あーいちゃん」


「っ!」




そう耳元で私の名前を呼んだのは、



紛れもなく蓮くんで。




「今のアイツはどうしようもないよ。


勉強で必死だからね」


「………そう…だよね」




私の今の状況を見て言ったのか、



なんだかシックリくる言葉。



そっか……。



邪魔しちゃいけないな。




「じゃあ……コレ。



翔に渡しといてくれる?



あと、先に帰っとくねって伝えておいて」




はいっ、と。



蓮くんにチョコケーキが入った箱を渡して、



チラッと教室の中にいる翔を見つめた。



放課後の為、人は少なく。



放課後なのに、帰る気配を見せない彼。



明日はテスト。



それは仕方が無いんだ。