無口な彼の妬かせ方





「怒んなよ」


「怒ってないよ」




プイッ、と顔を背ける。



まるで拗ねた子どものように。




「怒ってんじゃん」


「だから怒ってないって」




正直に言うと怒ってる。



けれどそれは自分自身に対して。



サプライズ、しようとしたのにな……。



ほんと、変な癖。




「そろそろ席に戻ろっか……」




翔、勉強してたもんね。



私、邪魔しちゃったかな……。



そんな罪悪感に浸りながら、



スクッ、とその場から立ち上がろうとしたけれど、




「あっ!」




手に抱きかかえていた、大量の料理本がバサバサと床に落ちてしまった。




「ご、ごめん!」


「………………」




それを一緒に拾い集めてくれる翔。



ほんと、私って、



鈍臭い女………。