「ほら、」
「栄ちゃん……」
久々に恵美に会った。
恵美は俺を見て、
気まずそうに下を向き、目線を合わせようとはしなかった。
「栄介、勉強教えて」
「無理」
「教えろ」
「なんで命令口調なんだよ」
あれからもう何日か経ち
あと一週間ちょいで実力テストらしい。
どうりで美羽が「勉強教えろ」ってうるさい筈だ。
「もうほんと留年かもしれない」
「お疲れ」
「おい」
無理、って言ってるにも関わらず
美羽は俺の机の上に大量の問題集を持ってくる。
ドサッ、と置かれたそれ
はぁ…っと溜め息をつきながらも、俺はその問題集に手を伸ばす
「部活休んでんだろ?だったら家で勉強出来るだろ」
「家に帰っても病院行かないといけないし、時間無いの」
「だから助けて」っと、ヘルプ信号を出す美羽
そんな俺はチラリと美羽の足元を見つめた。
「……………」
…仕方がないか。
「…俺じゃなくてもいいんじゃねーの?」
俺も偉いって程でもないのに、なぜ俺に頼むかが疑問だ。
「栄介がいいから頼んでんの。前、おかげさまで赤点まぬがれたしね」
そう言いながら美羽はシャーペンを取り出して
「ココ、教えて」と俺にすがる。
そんな中、俺は再び溜め息をついた。
……恵美は大丈夫なのだろうか
今回はちゃんと勉強に集中出来ているのだろうか