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「あれ、奇遇だね~」
「………………………」
仕事終わり。
その本屋の閉店作業が終わってから、コンビニに寄って帰ろうと思って駅前を通っていた。
けど、それが大いに間違いだったみたいで。
「……どーも」
「うわ、凄く嫌そうな顔してるね?」
「俺ちょっと傷つくや」って、そう言うコイツはいつも通りに丸メガネに大きめマフラー。
今日は帽子も被っていた。
「仕事終わり?」
「はい。では」
「あ。ちょっと待ってよー」
できたらもう関わりたくないんです。
結婚して欲しいとかぶっ飛んだことを言ってくる人となんて。
けれど、去ろうとした私の手を掴まれてしまったから逃げられない。
「………なんですか?」
「読んだよ、この小説」
「……………………」
ホラ、と見せられたのは紛れもなく私が紹介した小説で。
………何故か、緊張した。
私の1番気に入っているやつを紹介したから、
何を言われるんだろう…って。
気に入った?
それとも面白くなかった?
ドキドキと緊張で胸が鳴る中、
この人の表情が見えないから余計に緊張する。
「コレ、凄くいい話だね」
「!!」
良かった……気に入ってくれてたみたいだ。
その言葉にホッと胸を撫で下ろした。