(私ってほんとちょろい女だな……)



そう思いながら、頬に触れる手に重ねるようにして触れた。



「私が今日ここに来ているのは、引っ越す準備をしに。アンタの家に持っていく物をまとめにきたの。

勝手に来た事は悪いと思ってるけど、今日家に帰ってこないって言っていたから言わなくてもいいかと思った。

今度からはそうだったとしてもちゃんと連絡する。

………これでいい?」



丸メガネの奥の瞳をジッと見つめた。



「帰る準備するから、ちょっと待ってて」



そう言って、頬に触れる手を外す。


いとも簡単に離れたソレは、さっきとは違って力はなかった。



(引っ越す準備しに来たけど、結局寝てしまったなー…)



また今度準備しに来よう、そう思いながら部屋の中へと入れば



「っ!ちょっ!?アンタっ…」



ギュゥウ……


しまった……隙を見せてた。


背中を見せた瞬間、後ろから抱きしめられた。





「そっかぁ…良かった……」

「っ、」




耳元に響くコイツの声。


とても安心したような

そして嬉しそうな

そんな声が響く。



「そんな事なら俺も手伝うよ!」

「えっ」

「どれ持っていく?
電化製品はいらないね〜 家具もいらないや。

服と、あとなに?
あっ、下着もいるか」

「ちょっ?!」



離れたかと思えば、速攻家の中を漁り始めた。


ついに私のランジェリーにまで手をつけ始めたから急いで隠す。



「隠さなくてもそのうち俺に見られるんだからいいでしょ?」

「何言って…!!!」



「触んなっ!!」と、コイツの手に持つランジェリーをむしりとれば

ニコニコと笑みを浮かべるコイツ。


とても嬉しそうに、ニマニマと。



(この変態野郎っ……)



居心地が良いなんて思っていた私を、今となればぶん殴ってやりたくなった。