「おねーさんさぁ」





ジッと私を見るその目は



色素が薄いのか






「もしこの小説が映像化されるとして、

俺がその主役に選ばれたら結婚してほしいんだけど。」





他の人とは違う、とても綺麗な目だった。





「………はぁ?」


(何言ってんのコイツ…)





近い距離&その言葉




……全身に鳥肌が立った。




なに、新手のナンパか?



「何言ってんだ?」とでも言いたげな顔をしているのに、この人の目はずっとニコニコと微笑んでる気がする。




………キモっ






「言ってる意味がわからないんですけど。」

「あれ?わかんない?結構分かりやすく言ったつもりなんだけどな~」

「…………………」





全然わからん。



一般人が主役になんてなれるわけないでしょ。





あと。


まず付き合うとかじゃなくて、結婚なんだ?



頭ぶっ飛んでるんじゃない?コイツ。





「ね、約束してくれる?」

「…………………」





早く閉店作業を進めたくて、



めんどくさいこの人を追っ払いたかった。





「はぁ……いいですけど」





どうせ出来もしないし。



早くどっか行って欲しかったから

とりあえずそう答える。


……この返答がこの先私の人生を変えるとも知らずに。





「よっしゃ、じゃあ約束。」

「……………………」





指切りなんていつ以来だろうか。


ブンブンと大きく振り回されて指が痛い。





(さっさと帰れ………)





そんな私の気持ちとは裏腹に


コイツの目は心底嬉しそうな目をしていた。