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「では失礼しま~す!」

「ご苦労様です」




いつものように配達業者から段ボールを何個か受け取って、裏へと運ぶ。


その段ボールの中身は、もちろん本。

新刊や予約、売れ筋の本などなど。




「私、裏で仕分けておきます」

「ありがとう、お願いね~」




一言店主に声をかけて
段ボールを一つ一つ開けていく。


この瞬間が意外にも1番楽しみだったりするのだ。



(新刊、何かな)



新しい本を見るとワクワクするから。





丁寧に本を仕分けて

決められた棚へと置く。




「………、……?」



その中でも、一つの本だけがやけに多くて
段ボール一つ分に敷き詰められるほど入っていた。




(私こんなにお願いしたっけ?)




発注するのは店主で、

何を発注するかはほぼ私が決める。


私が言ったことを、店主がそのまま発注するという流れ。




てことはやっぱり…この量、私がお願いした?


こんな量、今まで頼んだ記憶がないんだけど。




「この本、こんなに頼みましたっけ?」




仕入れミスかと思って、レジにいた店主に声をかけた。




「あ~!それね、追加で50冊増やしておいた」

「えっ」

「それ、映画化するみたいでさ。売れ行き上がると思って」

「………なるほど」





テレビをほとんど見ていないため、全くその情報を知らない私。




言われてみれば、
その本の帯に【映画化決定!】の文字がある。




主演キャストらしき名前が書かれているけれど、全く分からない。写真付きならまだ分かっていたかもしれないけど。




(ふーん……)




こういうことがあるから、テレビやSNSはチェックしておいた方がいい…か。




手に持つその本を棚へと戻す。


この本は明後日店頭に出す予定だ。