「凛って、男経験なし?」

「……だったらなに」

「えっ、ほんとに?意外だなぁ。

凄く男慣れしてそうなのにね?
モテまくりの人生歩んできたんだと思ってた」

「喧嘩売ってんの?」




パシッとその手を払いのけて


私をイラつかせるような事ばかり言うそいつを無視して料理を進める。




「へー…そうなんだ?ふーん?」




見なくても分かる。


絶対ニヤニヤとキモい笑みを浮かべてる。




それを見てしまうとイラつきがピークに達して、熱々のしらたきを顔面に投げそうになるから絶対に見ないでおこう。




「じゃあ、まだ誰の色にも染まってないんだね」




無視無視。




出来上がったし、あとは盛り付けるだけ。






火を消して、後ろの棚にあるお皿を取ろうと振り返った。






………けれど、








「………これはなに」



「ちょっと嬉しくなっちゃって」




私を挟むようにしてキッチンカウンターに手をつくコイツ。



……ほんと近い。




「男慣れしてないみたいだから、顔赤いね?」

「アンタが近くにいるからアレルギーでも発症してるんじゃない?」

「あ、俺アレルギー?いいね~それ。俺色に染まってるってことじゃん」




何を言っても全部ポジティブに捉えるところは褒めてあげよう。





ただ、さっさとどけ。






「料理冷めるからどいて」

「嫌って言ったら?」




一切離れる素振りを見せないから、眉根を寄せてコイツの胸板を押してみたけれどビクともしない。



結構な力で押したのになんで動かないのよクソ。




「───あ。

そうそう、さっきの続きなんだけどさ」



「…続き?」




さっきっていつのことを言ってんの?


まず途中で終わらしてることなんてあった?




疑問に思って考えていれば





「男って、凛が思ってるよりも力強いんだよ。

自分の身は自分で守れるって言ってたけど、今守れてる?こーやってされても抵抗できる?」





胸板を押した手はすんなりとコイツの手によって捕まえられて、




「っ…」




少し強いその力に顔を歪めた。






「あぁ、ごめんね?

ちょっと力入れすぎちゃった。」




それに気づいているはずなのに、


その力を緩めてくれなくて






「………知ってた?



このままキスだって出来ちゃうんだよ」




「!!」





コイツの美形な顔が徐々に近づいてくるから




私の中で警報が鳴り響く。





ヤバイっと思った。