「…………………」






目元を軽く擦った。涙は出てなかった。
その事実を知って少しほっとした。





大丈夫。まだ、大丈夫。



アイツのいない生活にも慣れてきたところだったし。大丈夫、大丈夫。





小さく息を吐いてもう一度ペンを握る。



オレンジ色の画用紙に変えて紹介文を書こうとするも、私の脳内に広がる言葉は全く違うものばかりで。





『俺の目に映るのは凛だけで、綺麗だと思えるのも凛だけ。俺には気が逸れる時間すらないよ。』


『俺はどこにも行かないから』


『その時の凛が誰を好きになっていたとしても、誰と恋愛してようとどこにいようと。凛は俺ので、必ず迎えに行くから。……覚悟してね?』





(だから、覚悟は出来てるって…)






首周りが苦しい。



原因はたぶん、片時も外さずに身につけているあのネックレス。




ずっと身につけてる理由は少しでも彼と繋がっている証が欲しかったから。


………なんて。冗談でもそんなむず痒いこと言いたくないけど、ただ、付けていないと首元が寂しいのは事実。




近くにスマホがないと不安で仕方がない、そんなスマホ依存症と同じで私もこのネックレスが無いと落ち着けない。





だけど今はこの証が無性に苦しい。



私だけが期待してその時を待っていたんだと思うと恥ずかしさもやってくる。





私だけがこうやって証を身につけて


見る度にその人のことを思い浮かべて。






(……最悪の気分…)






忘れていればよかった。


なかった事にすればよかった。


身につけていなければよかった。






アイツは今、違う誰かを好きで



私のことなんてもう忘れているのに。