ツー、と。
春の指先が首筋を撫でるようにして触れる。
その感じがなんだか良くない方向に進んでいる気がして、
「春」
「こんな物だけじゃ足りない」
「春、…っ」
何度も名前を呼んでみるけど、効き目は無し。
似合ってると言ってくれたネックレスを避けて、春はそこに口元を近づけた。
……厄介。
その場所に痕をつけられるのは、だいぶ厄介だ。
前に一度付けられた時だって厄介なことになったというのに。
暖かくなってきた今、タートルネックで隠すとなると暑いくらいの気温。
だけど、チクリと触れた春の唇は酷く冷たい。
この痕、どうやって隠そうか。なんて隠す方法を考えている私に次がやってくる。
「ッ……!」
コイツいい加減にっ…
二度目は一度目よりも強く、微かに痛くて顔を歪めてしまうほどで。
「……会えない間に、俺の知らない時に」
バサッ、と。さっき拾ったばかりのウィッグがまたしても地面へと落下。
けど私を見下ろす春はそれを見る余裕すらも与えず、黒いオーラは未だに放出されたままで。
「奪われてしまうくらいなら……」
首に触れてあった
春の大きくて綺麗な手が
「今ここで、凛を殺して俺も死ぬ。」
私の首を締めるように包んだ。
苦しくはない。
春はただ、私を脅すためにしているだけ。
他を見るなと。
離れるくらいなら殺すと。



