酔いしれる情緒




「いやぁ~…半端なかっ……え。
ちょっ、どこ行こうとしてんすか!」


「どこって……終わったし帰ろうかと」


「何言ってんすか!
まだ終わってないっすよ!?」


「え?」


「試写会の醍醐味はこれから!!」





真っ暗になったスクリーンを前にして帰る準備をしたわけだけど、慎二くんにそう声をかけられてはもう一度席に座った。




醍醐味…?


映画はもう終わったのに、何が始まるんだろう。




試写会なんて慎二くんと同じく初めてで、映画を観て終わりだと思っていたけど、どうやらまだ先があるらしい。





「ねえ…何が始まるの?」


「何って、決まってるじゃないっすか」





首を傾げて慎二くんは言う





「出演者達に会えるんすよ!」





瞬間、会場中に大きな拍手と歓声が。




「ほらっ」と前を指差す慎二くんは満面の笑み。





そして──────








『みなさん、こんにちは。』








聞き慣れた声が会場中に広がり


キャーキャーと黄色い歓声が上がるこの場所。






その様子に驚くことなく、


慣れたように







『○○役を演じました一ノ瀬櫂です』







彼は私に違和感を覚えさせる笑みを浮かべる。