………そう。



ここまでは順調に事が進んでいたのに





「ワクワクするっすね!!」

「……………」





私は今、何故か会うはずのなかった慎二くんと一緒に映画館にいる。



こんな事になってしまったのは目的地である駅に到着した時だった。



見覚えのある後ろ姿だな、と。思っていた矢先、何故かぐるりと方向転換してバッチリと目が合ったのがコイツ(慎二くん)だった。



嫌な予感というものは当たるものなんだなと、あの時否定していた私に言ってやりたい。





「てゆーか安藤さんも『試写会』に応募していたなんて知らなかったっすよ~ 言ってくれてもいいのに!」


「あー…うん、そうだね」





応募……は、してないけど。




貰い物だ、なんて言ったらそれはそれで根掘り葉掘り聞かれそうでとりあえず頷いておく。





慎二くんの言ってる通り、今日はとある映画の試写会がこの劇場で開催されるらしい。



私がここにいるのももちろんそれが目当てであって。





「めちゃくちゃ倍率高かったみたいっすよ!」


「へえ、ソウナンダ」





橋本(さん)に渡されたチケットに『試写会のご案内』と小さな文字でそう記載されていたから。



それを見た時、何の?って。



一瞬でもそう考えてしまったけど、この時期に行われる試写会なんて本屋で死ぬほど見てきたあれしかない。




「そりゃそーっすよね!なんたって紬ちゃんと一ノ瀬櫂のタッグとか最高の組み合わせすぎるし!!あーー嬉しいなぁー!!紬ちゃんに会えるなんて…!」





夢だったらどうしよう!ってうんざりするくらい煩いコイツがそう言うから「殴ろうか?」と冗談混じり(割と本気)で声をかけた。



じゃあ「お願いします!!!」なんて。満面の笑みでそう返されるとちょっと、いや、結構引いた。





「安藤さんは一ノ瀬櫂目当てっすよね?!」


「なんでそーなるのよ」


「だって安藤さん、仕事中によく一ノ瀬櫂のこと見てたりするし!ほら!レジ前のポスターとか特に!!」


「…………映画が気になってただけ」


「間!だいぶ間があった今!!」





ぎゃあぎゃあと煩いコイツを早くどうにかしたい。


おかげさまでここにいる人達全ての視線を手に入れてる気がする。