「中の案内もできたことだし!
凛、こっち座って。」
言われた通りにリビングにある大きなテーブルを挟んで私達は腰掛けた。
会議でもできるんじゃない?
それくらい大きなテーブル。
「で。本題に入るんだけど、凛には家政婦さんみたいな事をして欲しいんだよね。俺家事一切できないからさ。」
「家政婦……」
「そ。家政婦さん。
あ、メイドさんでもいいね。
凛は俺のメイド。」
「いや、家政婦でいい」
「えー?
メイドって響き良いと思うんだけどな~」
そーなると、
メイド服とか着させてあげたいな~
なんて言っているけど、絶対着ないから。
死んでも着ない。
「………いいよ、家政婦やる。」
「ほんと!?あ、もちろんタダじゃないよ!
1日1万円でいい?1ヶ月だと30万円くらいかな?」
「……そんなの要らない。ここに住まさせてもらうんだから、それなりのことはする。」
1ヶ月、家事するだけで30万円入ってくると思うと、ちょっとだけ揺らいでしまった。
でも住まさせてもらうんだから、
ここの家賃とか光熱費とかもろもろ考えると
30万円以上はするだろうし(主に家賃が)
……受け取れない。
「えー、本当に?要らないの?遠慮してない?」
「いいって言ってるの」
「ごめん、怒らないで」
「怒ってない」
それにしても、
コイツはいつまでマフラーを身にまとってるんだろう。
この部屋すごく暖かいし
マフラーなんて絶対暑いよ。
「じゃあー、契約成立ってことで!
はい、コレ。この家の合鍵。
無くさないでね?」
「…………………」
私はソレを受け取ると、キーケースにつけた。
「これから凛と同棲か~ 嬉しいな~」
ウキウキとする目の前の男を横目に
私はキーケースにつけたその鍵を見つめる。
これからここに住むのか……
確かになんでも揃っているだろうし、
家に不満はない。
不満があるとしたら…コイツだけ。
「凛、」
呼ばれて、顔を上げる。
「これからよろしく。」
マフラーをスルリと取ったコイツの顔は
彼氏なんて欲しくないし興味がない私でも
不覚にも綺麗だと思ってしまったんだ。