「ほら……早く行って」
視線がやけに恥ずかしくって
今の私を見ないでほしくて。
パッと顔を逸らすけど────
「……っ!」
春は何の呼びかけもないまま、私の頬に手を添えては少し強引に唇を重ねる。
「は、…っ……」
一回だけだと思ったのも束の間。
後頭部に手を回されては、
再び引き寄せられて
「んっ……ぅ」
甘くて
熱くて
とろけるような
頭がふわふわして
もうその事しか考えられないような──…
(力…抜ける……)
朝からこんなことをされては身体がついてけない。
カクン。と足に力がなくなると、私の腰に腕を回す春と共に床へと落ちた。
クラッと目眩がする。
背中にヒヤリと冷たい感覚。
それは廊下の冷たさが背中に感じているからで
「あーもう、無理」
「っ………」
「凛が悪い。」
もう家を出る時間なんじゃないの?
遅刻しちゃうんじゃないの?
そう分かってるくせに、
(……止めたくないなんて)
春の首に腕を回しちゃってることが、そう示してる。