「" ロンリー "って、書いてある」
春は左手首にそれを付けると、小さく呟いた。
シルバーのメタルにどうやらその文字が書いてあるらしい。
「意味、知ってる?」
「……知らない」
いちいち単語の意味を調べて買ったわけじゃないし。
何か書いてるな~とは思ってたけど、
ただデザインがシンプルだから買っただけで
「" 寂しい "って意味。」
「………………」
そんなの、知るはずもない。
私、ずっとその文字を身に付けて仕事していたのか。
「凛の気持ちもそう?」
「そんなわけないでしょ。やっと溜め込んだ本を読み進められるんだ…し、」
春はドアを全開に開けて
部屋の前に立つ私の腕を引っ張った。
突然のことに前のめりになる私。
ぽふっと春の身体に飛び込むような形になってしまう。
「俺は、寂しいよ」
「っ…………」
「凛のいない時間がずっと続くなんて考えられない。だから────」
腰に回された腕。
ギューっと、強いようで、優しいその力。
「会えない分、充電させて」
変態野郎なのに
何されるか分からないのに
「……1分だけね」
春に甘えられると断れない。
「ちょっと……1分過ぎてる」
「うん」
「うんじゃない」
「あと30分」
「長いわ」
……嗚呼、でも
このぬくもりが心地良いなんて
(私も寂しいに決まってる…)
すごく離れ難い。