「ねえ、キスしてもいい?」


「無理…」





って。微かにだけどちゃんと断ったはずなのに、唇は躊躇わず触れ合う。




起きたばかりの春の唇は


ほのかにあたたかくて





「………っ」





1度触れ合ってしまえば


ペースは全て春の手に。



幾度となく落ちてくるキスに

全意識がそこに集中して



気づかないうちに手は握られているし


なんだか密着度の高い握り方で


ベッドに縫い付けられていた。




はあっ…と小さく息が漏れる。




苦しくはない。

ただ……胸は苦しくて、熱い。





「あー…ヤバい」





離れると、苦しそうに顔を歪める春。





「もっと、触れたくなる…」





とても熱っぽい目で見下ろされ、艶めいたその感じにドキッと胸が鳴るのも仕方がないこと。



じわりじわりと身体中を支配する熱は、紛れもなく春によって生み出されたもので。





(コイツのペースに流されるのは悔しい、けど……)





空いている手で私の服の袖を軽く捲る春の手を、なぜだか止める気にはならなかった。





「………………」





だけどすぐにそれは元の位置へと戻されて、春は「ふー…」っと小さく息を吐く。





「……欲望のまま、しちゃダメだね」





ニコリと笑って。


けれど少しつらそうに。



私の手はスルリと離されて自由になった。





「襲ってないよ」

「襲いかけてたじゃん…」

「うん。でも襲ってない」





ちゃんと我慢した。

そう言う彼はニコッと微笑む。




どちらかといえば、我慢を忘れていたのは私の方なのかもしれない。



あのまま流されたとしても


私は、春を受け入れていた、はず。



襲われたら出て行くって、

その約束を作ったのは私だというのに。





「凛の髪、俺と同じ匂いがする」





「嬉しい。」そう呟いたのと同時に、髪に口付けを落とす。



そりゃね。同じ家に住んでいるんだから、使ってる物も同じだよ。