売り場へ戻ってくると、例の小説が残り少なくなっていたから、追加補充する。
その際に本棚に貼られたポスターが嫌でも目に入って
(………付き合ってる、か。)
もしも。
もしもの話。
もしも桜田紬とデキているのだとしたら、
なんで春は私を家に呼んだの?
なんで私にキスをするの?
なんで私に、
(………好きだって言うの)
昨日私に向かってあてられた言葉が、今じゃチクリと胸に痛みを与える。
あの後、酔っ払いは一瞬にして眠りについていた。
気を失ったような、本当に秒で眠りについてしまったからちょっと心配にもなった。
そして……
『好きなんだ』
その言葉には身も心も震えた。
急な告白に急な寝落ち。
状況に身体も脳も追いつかず、
昨日の夜は一睡もしていないと言える。
朝起きたときにはいつものように春の姿はなく、ボーっとする脳内で一番に思い浮かんだことが
(話、出来なかったなー…)
だった。
まあ…酔っているときに話したところでちゃんとした会話は出来なさそうだし。



