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「あれ、今日はタートルネックなんすね?」
「…………………」
昼休憩が終わったあと、ストック整理をしていた私の元に慎二くんがやってきた。
どうやら今から勤務らしい。
「別にいいでしょ。邪魔。」
「冷たいっすね!」
邪魔だって言ってるのに、私と同じようにストック整理を始めてるし。
ジトーっと見つめれば
「店長に頼まれたんっすよ!ストック整理やってきてって!」
「…………………」
ストック整理に2人もいらん。
ここの店主は今誰が何をやっているかなんて把握していないから、適当にストック整理って言ったのだろう。
さっき「私やってきます」って言ったばかりだぞ。
溜め息をつく私に対し、慎二くんはなぜか上機嫌で。
「そういえば安藤さん!
あれ、知ってるっすか?!」
「………なに」
ほんと、上機嫌だな。
声が大きくてうるさい。
「昨日、隣駅の居酒屋に紬ちゃんと一ノ瀬櫂が来てたらしいっすよ!」
ピタリ
自然と動かしていた手の動きが止まる。
「やばくないっすか!?隣駅っすよ!あーー!昨日その辺歩いてれば良かったー!!」
………だから上機嫌なのか。
近い場所に有名人が来ていたから。
しかも、慎二くんが会いたいと言っていた子が来ていたのだから。
「2人、付き合ってるんすかね?」
「………さあ、どうなんだろうね。」
「美男美女だし、ありっすけどね~」
止まっていた手を再び動かして、ストック整理を再開させる。
仕事中だ。ちゃんとしなきゃ。
そう理解しているつもりなのに、何度か本を落としかけた。
なんだ、これ。
何を動揺してるんだろう、私。
「やっぱり俳優さんとか女優さんって、
カップル役した同士が実際にもひっつきがちっすよね~」
「………そうだね。」
「あー!羨ましい!一ノ瀬櫂!!俺も紬ちゃんと付き合える人生を歩みたかったっす!!」
1人で騒ぐ慎二くんを横目に、ストック整理を途中まで終わらせた。
「じゃあ私は売り場戻るから」
「了解っす!」
残りは慎二くんに任せてその場を後にする。
(隣駅の居酒屋…)
ずっと冷たい対応をしていたものの、しっかり話は聞いていた。
昨日酔って帰ってきた春。
一緒に飲んでいたのは、桜田紬?
………それは、2人っきりで?
「…………………」
なんだろう……すごく、ムシャクシャする。



