酔いしれる情緒





春の腕を掴み、
逆にベッドへ押し倒してやった。




キョトンとする顔を上から見つめるも、
その顔はどこかとろんとしていて。



……結構飲んできたんだな、と気づかされる。





「勘違いしてるから。私にセフレなんていない。逆に、こんな私にいると思う?」

「………いないの?」





溜め息をつき





「キスするのも春が初めてなのに、そんな私がセフレなんて作ると思う?」





キスでさえも不慣れな私がセフレだなんて、ハードル爆上がりでしょ。





「………いないんだ」

「だから、何度もそう言って……」





まだ信用できないのかと、



同じ言葉を繰り返そうとすれば





「っ!」





背中に回された腕によって阻止されてしまった。



ギュッと抱きしめられて、身体が密着する。








「良かったー……」





安心しきった、声だった。



消えて無くなってしまいそうな、そんな声。





「ほんと、焦った、」

「………私も焦った」





襲われるんじゃないかと思って。



いや、ほぼ襲われていたっけ。





「ごめん、凛。ほんとごめん」





腕の力を緩めて、しっかりと私の顔を見てそう言った。





「襲うつもりじゃなかったんだ。だけど、凛の顔を見てセフレがいると思うと無性に腹が立って……」





気まずそうに、そして苦しそうに顔を歪める春。





「他の男のものになんて、ならないで」

「っ、」





頬に触れる手。





「初めては全部俺にして」





触れた唇はまだ少し熱くって



その熱とその言葉に


心は溺れてしまいそうになる。