酔いしれる情緒






「は、る、っ…」

「………………」

「ねぇ、春っ…」

「………………」





声をかけているのに無反応。



聞く耳すら持ってくれない。



ただただ私を求めて

噛み付くようなキスを交わして



耳に響き渡る音は微かな呼吸音と
背筋がゾクリと震えるような水音だった。




そんな春が





「っ、やっ…」





遂には服の中に手を入れる。



滑り込むようにして入り込んだ手。



寒い所から帰ってきたばかりだからか、
少し冷たいその手が私の素肌を撫でた。




その冷たい感覚と肌をなぞる指先。





「あっ…」





酔ってるコイツに襲われているというのに、



その手つきはあまりにも刺激的で

けれども甘く優しくて



私の身体は酷く感じてしまう。




漏れる声は自分のものではないような。




こんな声が出るのだと、


意識すれば身体がカッと熱くなり





「やだ…ねえ、春っ」





有難いことに正気に戻る。




必死にその手を止めようとした。


掴んで、ギュッと押さえ込む。



不服そうに私を見る彼は、鋭い目つきを私に向けた。





「セフレ、いるんでしょ」

「はっ…?」

「だったら、俺とも、出来るよね?」





寂しげな顔だった。



キュッと胸の奥が苦しくなるような、そんな顔。








(セフレ…?)





誰が、そんな事を。





(…………っあ。)





一瞬にして慎二くんの顔が思い浮かぶ。





アイツかーーー!!!





"あっ!もしかして!例のセフレさんっすか!?"





そういえば、そんな事を、春がいた時に言っていた。




春はそれを勘違いしていて


私にセフレがいると思ってる。





(ああもう…めんどくさい事になった)





こうなってしまったのは紛れもなく慎二くんのせいで、




……そして





「春。」





アンタのせいでもある。