「か、買うって……?」
「ここから歩いて15分のところにホテルがあるんだ。そこで一晩、僕と過ごしてもらう」
青年は淡々と話を続けているが、頭がうまく回らない。
それって、そういうコトだよね?
この歳になって男に買われるって……。でも、凍死するよりはマシ?いやいや、でも……。
パニックになる私を見て、青年は口角を上げた。
「あー、そういうことじゃない。えっちなことはしないよ、勿論キスとかも。ただ、僕と添い寝するだけ」
「添い寝……?」
「うん、どうかな?悪くない条件でしょ?」
整った顔で真面目に見つめられると、この異常な状況を受け入れそうになる自分がいる。
そうしてゆっくりと差し出された手は、大げさに言えば生死の狭間にいる私にとって、あまりに魅力的なものだった。
これを断れば、明日が来ないかもしれない。
戸惑いながらもその手に自分の手を重ねると、青年は満足げに柔らかく微笑んだ。
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