「帰るの?」 「あぁ、明日からまた仕事だ」 「そう。頑張ってね」 「ありがとう」 「じゃあ、またね」 手を振り改札を抜けようとする。しかし、それはできなかった。 「少し、話さないか」 「……は?」 「いや、違う……」 秀人が私の手首を掴んでいて、その場から動くことができない。 何事かと振り返り、視線が合って身体が硬直する。 「俺が、話したいんだ」 あまりにも真剣な秀人からの誘いを、断ることはできなかった。