「春香?……どうしたの」 「……」 「何か嫌なことがあった?」 「……」 私を包み込むように、ユキの腕が私の背中に回り安心する。 私はいつからこの子の体温に安心するようになっていたんだろう。 ずっと、こうしていたい。でも、でも……。 「……ごめんなさい。仕事でちょっと嫌なことがあって」 「……そうなんだ」 「今、離れる」 「いいよ」 「え」 「しばらくこうしてよう? 僕も人肌恋しかったから」 耳元で聞こえたユキの声に泣きそうになった。