「無理、やっぱり許せないわ。あなたのお母さんに抗議してくる」
「は、待っていいよそんなことしなくて。今何時だと……」
「そんなことでもないし、時間なんて関係ないわよ!!」
「春香、落ち着いて」
「っ……!!」
切羽詰まったような大声に言葉を失う。
なんで春香がこんなに怒ってるの? わけがわからない。なんで……。
とにかく、今にも部屋を飛び出して行きそうな春香の両肩を掴んだ。
春香は僕の顔を見てグッと何かを堪えると、気持ちを落ち着かせようとしてるのか、大きく深呼吸をした。
そして、僕の着ているシャツの胸あたりをぎゅっと握りしめる。
「なんで……まだ子供のあなたが色んなことを耐えて、苦しんで、お父さんとの約束を守りたい一心で頑張ってきたことを……あなたのお母さんはそんなに簡単に踏みにじれるの?」
「……」
「たった一人の、子供なのに」
「……春香、いいよ。僕は聞いてもらえただけで」
「よくない」
まるで自分のことのように、揺れた弱々しい声色で話す春香を宥める。



