愛しのキャットボーイ〜野良猫少年拾いました〜




 お父さんが死んで数年が経ち、お母さんは徐々に立ち直っていった。
 専業主婦だったのに資格を取り仕事を始め、女手一つで僕に何不自由なく安心した暮らしをさせてくれた。


 お母さんの仕事は忙しくなかなか会えないけど、その表情に徐々には笑顔が戻り、安心していた。
 沢山勉強して、早く大きくなってお母さんを支えよう。
 中学時代の僕は本当にそればかり考えていた。


 ────だけど、そんな僕の考えは容易く崩される。



「……再婚?」
「ええ、職場が一緒の人で……うちの事情もユキのことにも理解がある優しい人なの。今度一緒に食事でもしましょう」



 お母さんの表情が緩んでいた。
 お父さんが死んで以来見ていなかったような……安心しきった表情。
 二人で住んでいたアパートの居間、珍しく仕事を早めに切り上げてきたお母さんの言葉に思考がまとまらなかった。


 お母さん……お父さんのことはもう、忘れちゃったの?