キミに溺れる。〜ピンク髪の先輩と派手色な恋を〜


3人での帰り道。

「日南、ありがとう」と深見先輩が囁くように謝った。


隣を歩く日南先輩は、いつもの表情に戻っている。


「ホントだよなー。俺いなかったら、お前、絶対喧嘩してただろ」

「……やばかったな」

「今度喧嘩したら退学──」

「え、退学ですか?」


“退学”という聞き慣れない言葉に口を挟んでしまった。

ドラマの中でしか聞かない──退学。
危機に瀕している人が身近にいるとは思わなかった。


「そう。深見は短気で喧嘩っ早くて……それで先生に目つけられて、『次に喧嘩したら退学』って言われてんの」

「……そ、そうなんですか」

「一応気をつけてるけど、カッとなると手が出る。日南がいなかったら確実に殴ってたな」


そっか……。
だから日南先輩、深見先輩の名前を呼んで止めたんだ。