「サリーちゃん、ごめんねー。うちの男子、想像以上にバカだから」
わいわい騒ぐ男子たちを、花森先輩が呆れながらも楽しそうに見ていた。
ラベンダー色の髪をした花森先輩。
花のような匂いの香水が漂ってきて、その色気に同じ女の私ですらドキッとする。
「いえ、楽しいです。……それより、どうして私のあだ名が浸透しているんですか?」
会話の内容よりも「サリー」呼びが気になった。
私の質問に答えてくれたのは、青柳先輩。
「日南が『サリーちゃんサリーちゃん』うるさいから移った」
「そんな連呼してねぇよ」
「気づいてないだけだろ。たち悪いねー」
「はぁ?」
……まぁ当然か。
ムードメーカーの日南先輩が私を「サリーちゃん」と呼べばみんなも呼びたくなるよね。
日南先輩がつけてくれたあだ名。
2人だけの合言葉じゃなくなるのは寂しいけど、「坂下サン」──そう呼ばれるよりもずっと嬉しい。