口を開きかけた時。
会議室に着いた俺の視界に、サリーちゃんが映った。


艶やかな黒髪、毛先が跳ねるポニーテール、華奢な背中。映るのは後ろ姿なのに、すぐに彼女だってわかる。

ファッション部やモデルたちでごった返す会議室。
目立つ恰好をしているわけでもないのに。彼女の周りだけ、キラキラ光っているような……。


そんなサリーちゃんは誰かと向き合っているようで。相手が同じクラスの女子だとわかった──次の瞬間。


相手の女子が、サリーちゃんに勢いよく肩をぶつけた。

……わざとだとわかるくらいあからさまに。


倒れたサリーちゃんが人混みの中に消える。

……は?


「……っ!」


頭で理解するより先に身体が動いていた。
窓枠に足をかけて、中へ入る。


「「キャー!!!」」


悲鳴に似た甲高い声が沸く。
耳が痛くなるほどの声でも、俺の意識はすべて視線の先。


床に尻もちをついていたサリーちゃんがこっちを見て、驚きと戸惑いを含んだような表情を見せる。