前を歩く日南先輩。
日南先輩をこんなにじっと見つめたことはあったかな。
遠くから見ていたとしても、怖くて目を背けていた。
身長の高い桐生先輩や深見先輩といると小柄に見えたけど、私に向ける背中はやっぱり大きい。男の人だ。
繋がれた手も骨張って、逞しい。
私の手なんて簡単に包み込める。
毛先が跳ねたピンク髪は、揺れるたびに桜の花びらが舞っているみたい。
……あんなに怖いと思っていたピンク色の髪の毛。
背中も、手も。存在感も、威圧感も。
今は、すべてが優しく感じる。
……私は何を見ていたのだろう。
じんわりと涙が溜まって、日南先輩の背中を映した視界が歪む。



