……だけど、日南先輩はどうして怒っているのだろう?
理由はわからないけど、怒っている──その感情だけは、彼を取り巻く雰囲気から察した。
「あ、ありがとうございます……」
お礼を述べながら立ち上がった。
ざわめく室内の視線が、こっちに集中。
王子様のような日南先輩の一連の行動に「カッコイイ……」なんて漏れる声が聞こえる。
────しかし。
笑顔の1つも見せようとしない日南先輩は、驚く先輩の方へ身体を向ける。そして……。
「謝れよ」
それは、『大丈夫?』と心配してくれた時の柔らかな声とは違い、その場にいるみんなを竦ませるほど低く冷たい声だった。



