翌朝。
スマホのアラームで起こされた。
「さっちゃん、遅れるよ」とお母さんに声をかけられるまで布団から出られない。
やっとの思いで起き上がって、寒さで肩を竦めながら洗面所に向かい、お湯が出るのを待ってから顔を洗う。
リビングに行って、キーの高いアナウンサーの声を聞きながら少しだけぼーっとテレビを見た後、自分の部屋に戻って制服に着替える。
──いつもと変わらない朝。
あまりにいつも通りだから、昨日のことが夢だったんじゃないかとさえ思う。実感がない。
だけど……。
────ピロン。
ベッドに置いたスマホが鳴った。
【おはよう】
日南先輩から一言。
そうメッセージが入った。
日南先輩は頻繁に連絡を取る人じゃない。
ましてや、用のない挨拶を送ることもしない。
今までとは違う。
夢なんかじゃない。
4つの文字を見ただけで顔がニヤける。
私は、お母さんが作ったキツネの「おはよう」スタンプを返した。



