「あのさ」
声のトーンを僅かに落として星野くんが言う。
私は視線を手元に置いたまま、次の言葉を待った。
「万桜くんと、何かあった?」
切り込まれたのは、唐突な言葉。
ペンを走らせる手が止まる。
「なんで……?」
声の震えを抑えられなかった。
何かあったと言っているようなもの。
「いや、なんとなく……。万桜くんに何か言った?」
「言ってない。……言ってないから、嫌われちゃったのかな」
ぽつり口から出たのは、弱音だった。
「嫌う?」
「告白の返事しなくて、愛想尽かされちゃったのかな……。だから日南先輩、『俺のこと考えなくていい』なんて言ったのかな」
誰にも言わないで、1人で日南先輩の言葉を考えていた。ずっと。
……だけど、どうしたって考えはループしてしまい、出口が見つからない。
星野くんとは日南先輩の話をよくしていたから、自然と言葉が漏れた。
「……でも、今さらそんなこと言われても、手遅れ……。気づけば日南先輩のことばっか考えてる。考えないなんて……もう、むりっ……」



