「坂下?」
「……え?」
星野くんの横を通り過ぎようとしたら、手首を掴まれて引き止められた。
「あ、いや……」
言い淀みながらもすぐに手を離した星野くんは──意味深なことを呟く。
「泣いてるのかと思った」
……っ。
星野くんは、優しい人。
言葉には出さないけど、クラスで浮く私を気にかけて一緒にいてくれる。
「気にしてないよ」と私が言っても、なんだかんだ話しかけてくれる。
浮かないように──そう立ち回っているのがわかる。
だからなのかな。
星野くんに見透かされている気がする。
「ふふっ……、なにそれ。泣いてないよ」
泣いてない。
涙は流していない。
「だよな……。ごめん」
──でも、心は悲鳴を上げている。



