「サリーちゃん、日南に返事した?」
廊下の壁に寄っかかりながら花森先輩が突拍子のない話を始める。
恋バナを期待するように頬を緩ませて。
「いえ、まだ……」
「えー、なんで?」
廊下のど真ん中でなんて話をしているのかと思いつつも、言葉を選びながら紡いでいく。
「えっと……その、私は日南先輩のことをどう好きなのか、まだはっきりしなくて……」
「もしかして、サリーちゃんって初恋まだ?」
私は首を横に振った。
初恋は年長さんの頃。同じさくら組の男の子のことが大好きだった──ってお母さんから聞いた。正直、覚えていない。
その次が辻堂くん。
恋が花開く状態なら、どちらも実が成った程度。
実質、初恋はまだかもしれない。
「そっか。でも、『どう好きか』ってことは好きではあるんだよね?はっきりしないってどういうこと?」
ここまで切り込んで問われるのは初めてだった。
だから、自分の気持ちの現状を言葉にするのも初めて。



