そんなある日のこと。
4階の廊下で花森先輩とすれ違った。
私は1人で……珍しく花森先輩も1人。
ラベンダーカラーのロングヘアを妖艶に揺らし、花のような香りを振りまく花森先輩。
モデルに負けず劣らずの細くて長い手足も、くりんと上がったまつ毛も、ぷっくりした唇も。そのすべてが女子の憧れ。
それでいて──
「サリーちゃん!やっほー!」
ノリが良い。
私にもたっぷりの愛嬌で挨拶してくれる。
本当に素敵な人。
「こんにちは!」
「サリーちゃんも1人?」
「はい」
問題児集団の中で、花森先輩だけが前半クラス──つまり、4階に教室があるので、こうしてすれ違うことがよくある。
学校一の人気者は日南先輩だけど、見かけるたびに多くの友達に囲まれている花森先輩も負けていないと思う。



