「いやいや。サリーちゃんが嫌なことあったんでしょ?……そしたら、俺が聞く側だろ」

「嫌なこと……そうですね。いっぱいあります」

「例えば?」


さっき先輩に嫌味を言われた。

この前は陰口を言われた。

それと……。


でもやっぱり、1番は────


「両親が離婚したこと、ですかね……」

「いつ?」

「夏休み期間中です。それで私、苗字が変わって……、まだ慣れないです。新しい名前」


えへへ、と作り笑いをした。

もうすでに弱音を吐いているけど、それでも彼の前では良い子でいたい。今さら強がって見せる。


「そっか……」と彼が呟いた時だった。



「日南いねぇよ。あいつ、どこ行った」


下──彼よりももっと下、1階の裏庭から男子の声がした。