「かっこいいー」


棒読みのような声が聞こえてきて振り向くと、青柳先輩が頬杖をついて笑っていた。

その視線は、日南先輩を向いている。


「あの……日南先輩」


ぷいっとそっぽを向いてしまった日南先輩。

机の下で繋がれた手は、まだ離れていなかった。


……どうしよう。こんなところを見られたら、変に思われちゃう。

でも、離したいのに、先輩が力を入れているから離せない。


「いやー、今のは日南が悪役っぽかったわ」

「どんまい」


「あれはずるい。サリーが惚れるのも無理ねぇよ」


……ん?


「いやいや。彼女持ちの奴が取る行動じゃねぇだろ」

「むしろ断罪すべき」

「ギルティ!」


……んん?
ちょっと待って……。

今、聞き捨てならない言葉が聞こえたのですが……?


「あの、なんで知っているんですか?辻堂くんのこと……言いましたっけ?」


そう訊くと、みんなが「あっ」と言葉を漏らして黙ってしまった。

なお、青柳先輩だけは無邪気な笑顔を見せる。