「わぁっ!きれい……!」


暗い空にひらひらと舞い散る桜の花びら。
月の光と街頭が桜を照らして輝いているのがすごくきれいで、声が出た。





──季節は巡り、3月。


無事に高校の卒業式を終えた私が暁に連れてきてもらったのは、桜並木。


今まで明るいうちにしか桜を見たことがなかったけど、夜桜もすごくきれいなんだと知った。




バイクを近くにとめて2人で歩く。
今現在、ここには私たちしかいなくて桜を独占状態。


世界に2人だけになったみたい……

なんて、柄にもないことを思った。





「花びらとれるかな」


花びらを1枚つかめたら、今日の卒業記念に持って帰りたい。
押し花にでもしようかな。



暁とつないでいないほうの手で落ちてくる花びらをつかもうとする私。


でも、なにもつかめない。
手のひらを見てもなにもなかった。