……優しそうな人でも、敵は敵。
何をしてくるかわからない。



私は身構えながらも車をおりた。



「こちらです」


男性が歩き出して、私はその後ろをついて行く。


数歩後ろを歩いて高層ビルの中へと足を踏み入れれば……見えた光景に体が凍りついた。



エントランスに何十人といた黒服姿の男性たち。
横に並んで全員がこっちを見ている。



「…………」


……まさかここにこんなにいるとは。
何十人じゃなくて……何百人といるかもしれない。


隙をついて暁を連れて逃げよう、とかも考えていたけどさすがにこんな人数から逃げるのは無理がある。




……いや、だめだ。
怯むな、諦めるな、私。

敵地で弱みを見せるなんて絶対ダメだ。