犬飼真帆に暁を諦めてもらえさえすれば、これ以上一条組は犬飼組にちょっかい出されることもなくなるんじゃないか。


暁を返してもらって、犬飼組は争う気がなくなったことを知れば……一条組と犬飼組の抗争はとめられるんじゃないか。


平和的に終わらせることができるんじゃないか。




……ヤクザの世界にいて、こんな甘い考えしてるのって笑われるかな。
私が行ったら、暁はぜったい怒るよな……。




それでも……私が行くことで暁を奪い返せる可能性が少しでもあるのなら、抗争をとめられる可能性が少しでもあるのなら、それに賭けたい。


今は彼女のその言葉を信じたい。
信じるしかない。



今まで命をかけて私を守ってくれた暁を、今度は私が命をかけて助けに行く。





「行ってやるわよ」


私がそう返せば、ふふっと笑われた。


『今そっちに車をまわすわ。……そうね、一条組から1番近いコンビニに集合ってことでどうかしら。誰にも言わず、ぜったい1人で来てね』


最後にはそう言われると切れた電話。




絶対、なにがなんでも暁を奪い返す。
無事に帰ってみせる。


強く思って、私はすぐに行く準備をはじめた。