月夜に笑った悪魔 (番外編)



暁に心配させたいわけでも、気まずくなりたいわけでも、ケンカしたいわけでもない。


ただ、普通でいたいだけなのに……。




「ご、ごめん。私、今日は屋上でお昼食べるね……。なんか、今日は外の気分で……」


何を言ったらいいのかわからなくて、暁のジャージをソファの上に置いて私は逃げるように立ち上がった。


そして走って、手をかけた扉。
後ろから声が聞こえてきても振り返らず社会科準備室の外へ。




とにかく全力疾走。
追ってきてほしくなくて、ただ足を動かしていれば。




「美鈴、鞄は?弁当こん中に入ってるのに置いてくのかよ?」


そんな声が聞こえてきて、私はピタリと足をとめた。



なんというミス。


……鞄を持ってくるのを忘れた。
屋上で食べる、とか言ったのに。


手ぶらで行くなんてなにかあるって思われる。