そうしていれば岳はワインを開けて、ワイングラスに注ぐとそれを紫乃に手渡す。
私たちのことなんて気にしていなさそう。
一方で暁はまだ私を見てる。
もうひと口、なんて声も聞こえてくるけど聞こえないフリ。
人前でそういうことはやめてほしいもんだ。
暁はよくても私は恥ずかしい。
……そもそもなんで私が食べさせなきゃいけないんだ。
同じものが目の前にあるんだからそれ食べればいいのに……。
確かに人の食べてるもののほうが美味しそうに見える時もあるけどさ……!
伸びてくる手。
グラタンを素早く口に運ぼうとしたその直前で私の右手首はつかまれて……。
引き寄せられると、彼はそれをぱくり。
食べようとしていたグラタンがまた食べられた。
「あっ!また食べた……!」
暁は口を動かしながら、手を離す。
それから彼は普通に食べる手を進めるから、もう満足したのかもしれない。



