なんだろう……。体が雲で包まれてるみたい…。
「んんっ…ふぐっ」
少し唸って寝返りを打ったとき、ゴンっと額に硬い何かが衝突し、うっすら目を開けた。
私の横には大きな猫のぬいぐるみが背を向けて横たわっていた。
ぬいぐるみか……と痛みを忘れ、再び目を閉じてぎゅっと抱きつく。
あったかいな……。
怪しむことなく、うとうとと二度寝のレールを彷徨っていた。
「あ…?」
今のなんだろう。
このぬいぐるみが喋ったのかな。
温かい上に喋るなんて万能だなぁ。
しばらくするとぬいぐるみがもぞもぞと動いて、乱暴な手つきで引き剥がされた。
「ん…ゃだ……」
かすれた声で呟いて、また抱きつく。
少し身じろぎして引き剥がそうとしているが、遠慮がちに肩を押すだけで私には突破できる壁。
「っ! ……離れろ」
可愛いぬいぐるみなはず……。
なのにきいている口はちょっとキツい。
口の悪さに驚き、意地でも目を開けまいと抵抗する私にため息を吐く声が聞こえた。
「まず起きろ」
首を横に振って、ぬいぐるみの胸ら辺に顔を埋める。
「…怒るぞ」
お、おこる……怒る…?
はっ……!!
「怒るのやだ」
単純な私はガバッと起き上がって、しょぼしょぼしている目を無理矢理こじ開ける。
そのせいで、目に今まで感じたことのない痛みが走った。
「あ……」
手を目に当て、正常を確認する。
良かった。目が千切れるかと思った……。
「今すぐ離れろ」
「…ん?」
声が聞こえた方を見ると、そこにはぬいぐるみが……いるはずだった。
「え…? へ?」
「聞いてんのか?」
「聞いて…ます、けど……」
たどたどしくなっちゃったけど…信じられない。
目をごしごしと擦って、目を何度もぱちぱちしても目の前にいるのは、人間なのに人間離れしてる容姿で……。
「……うえぇぇぇぇぇえ!!!!!!」
「うっ……うるさい…」
大分遅れた叫び。
喉が潰れそうなくらい仰天した。
あ、危ない…。危うくベッドから落ちるところだった。
猫の耳。青と赤の瞳。
そして、あの不良を遥かに越える美形で白い肌と髪を持ち、無気力さを感じる。
こっ、これが“猫系男子”というもの…?
その気怠さと、猫耳や尻尾がそう連想させる。
猫の耳…がある……人間…?
手足は人間のもので、耳と……尻尾がある…。
雪よりも白い髪の毛の間から不機嫌そうにこちらを覗くオッドアイの瞳が宝石のように煌めく。
「綺麗……」
気付けばその言葉が漏れ出していた。
「いいから離れろ」
「ひっ…ご、ごめんなさい…」
鋭い目つきで睨まれ慌てて、背中にまわしていた腕を解いた。
恥ずかしさから、顔が赤くなる。
「最悪の寝起きだ」
と、不機嫌MAXで訴えてくる猫……猫人間さんに、あたふたする。
でも、困って眉を下げた。