もふもふ耳には危険あり!



* º ~ º *


「これまでの法則を踏まえた上で問題を出します。さて、この問題わかる人いますか?」



黒板に並べられた数字にみんな頭を傾げた。


先生の問いかけに誰も手を挙げようとはしない。



「いないですか。なら当てますよ」



生徒一人ひとりから緊張がひしひしと伝わってくる。


後ろの席から喉をごくりと鳴らす音が聞こえ、いつもの騒がしさを見せないほど教室は静まり返っていた。



「では草薙-クサナギ-さん。この問題解いてみてください」



彼は名前を呼ばれた瞬間、肩がびくっとはね上がった。  


他の生徒たちは緊張から解き放たれたことで安堵のため息をはいて、数秒後には彼を煽るようにくすくすと笑った。


なにこの空気……。

気分が悪い。



「草薙さん?」


「わっ、わかりません……」



彼は赤い顔で俯いて、周りからは馬鹿にされている。



「へっ、こんな問題もわかんないのかよ。ダサっ」



そう言われた彼はもっと顔を赤くして、わなわなと震えていた。


わからないことは恥ずかしいことじゃないのに。



「では、あなたはわかりますか?」



先生はさっき彼にダサいと言った女子に問いかけた。


まさか自分の番がくるとは思っていなかった彼女は、とても焦っていた。



「わからないんですね? わからないならあなたは人のこと言えませんよ、佐倉-サクラ-さん」



心なしか、彼女に圧をかけているような気もする。



「あんなこと言ってたのにお前もわかんねぇの? ダッサー!」



と周りがゲラゲラと笑い、彼女は屈辱で顔を真っ赤にした。


「静かに」と先生が生徒を静める。



「この問題、あなたなら解けますよね?」



いま誰に言ったんだろうと顔をあげ、先生の視線を確認しようとすると目が合った。


まさかな……と思い瞬きするも同じ。



「……私ですか?」



衝撃だった。ノーと言ってほしい…。



「そうです。あなたですよ」



あなた“なら”ってどういう意味なんだろう……。


私はそんなに優れてないのに。



「わかりません」


「本当に?」



先生の視線が棘のように痛い。



「本当です」


「そうですか…。それは残念です。では解答を公開しますね」



思ったよりあっさりと逃れられた。



「今まで8年この学校に勤めてきましたが、この問題はそのうちの大半の生徒が間違える問題です」



先生の解説が全く頭に入らない。


目を閉じて音に集中していたら、次第に先生の声が遠のいていった。